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写真のしくみ
  1. 序 はじめに
  2. 01 カメラという装置
  3. 02 レンズ
  4. 03 センサーと画質
  5. 04 ピントとオートフォーカス
  6. 05 露出と段
  7. 06 絞りと被写界深度
  8. 07 シャッターと時間
  9. 08 測光とヒストグラム
  10. 09 焦点距離と遠近感
  11. 10 自然光
  12. 11 ストロボと人工光
  13. 12 色
  14. 13 RAW 現像とレタッチ
  15. 14 構図
  16. 15 アングルとショットサイズ
  17. 16 ポートレート
  18. 17 風景
  19. 18 夜景と星
  20. 19 物撮りと料理
  21. 20 スナップ
  22. 21 動きもの

第 5 部 色と仕上げ

12 章 色

光には色があり、カメラはそれを人の目のようには補正しません。色温度とホワイトバランス、色の表せる範囲(色空間)、そして色の鮮やかさを決める設定を扱います。

光の一本道のうち、この章の範囲

  1. 光 (この章で扱う)
  2. レンズ
  3. 絞り
  4. シャッター
  5. センサー (この章で扱う)
  6. 現像 (この章で扱う)

この章でわかること

  • 色温度が何を表していて、なぜ数字が大きいほど青いのか
  • ホワイトバランスの仕組みと、プリセット・グレーカードの使い方
  • 緑とマゼンタの軸(ティント)と、ミックス光の扱い方
  • sRGB・Adobe RGB・Display P3 の違いと、どれを選べばよいか
  • 彩度と自然な彩度、ピクチャーコントロールの役割
この章の見出し(5)

白い紙は、晴れた日の昼でも、電球の下でも、人の目には白く見えます。けれども、紙に当たっている光の色はまったく違います。晴れた昼の光はほぼ白く、電球の光ははっきりとオレンジです。

人の目と脳は、周りの光の色に合わせて自動的に補正をかけ、「白いものは白い」と感じさせてくれます。センサーは補正しません。届いた光の色を、そのまま記録します。電球の下の写真がオレンジ色に写るのはこのためです。

この章では、光の色を数で表す方法と、それをカメラに伝えて補正させる方法、そして写真が表せる色の範囲を扱います。

色温度(Google 画像検索)#

光の色みは 色温度 で表し、単位はケルビン(K)です。

光源おおよその色温度
ろうそくの炎1900K
電球色の照明・白熱電球2700〜3000K
日の出・日の入りの直後2500〜3500K
昼白色の照明5000K
晴れた日の昼の日差し5200〜5500K
ストロボ5500〜6000K
曇りの日6000〜6500K
晴れた日の日陰(空の光だけ)7000〜8000K
ブルーアワー、澄んだ青空10000K 以上

直感に反しますが、数字が大きいほうが青く、小さいほうが赤いです。暖かい色ほど数字が小さいのです。

この数字は、黒い物体を熱したときの温度から来ています。鉄を熱していくと、はじめは暗い赤、次にオレンジ、黄色、白と光の色が変わり、さらに高温では青白く光ります。そのときの温度が色温度です。「暖色・寒色」という感覚的な呼び方とは向きが逆になっているので、ここは覚えてしまうのが早道です。

ホワイトバランス#

ホワイトバランス は、「この光の下で、何を白とみなすか」をカメラに伝える設定です。光の色温度と同じ値を設定すれば、光の色が打ち消されて、白いものが白く写ります。

読み込み中…

グレーカード — 右のカード — 光とのずれ —
2800K
5500K
0
最初は電球(2800K)の部屋で、ホワイトバランスを太陽光(5500K)のまま撮った状態です。WB の設定を光の色温度に近づけると、グレーカードが無彩色になります。ミックス光では、左右のカードを両方とも無彩色にする設定がないことを確かめてみてください。

シミュレーションの「光の色温度」と「WB の設定」を見比べてみてください。

  • 2 つが一致する — グレーカードが無彩色に写ります
  • WB の設定のほうが大きい — 光を実際より青いとみなして、赤みを足す補正がかかります。写真はオレンジ寄りになります
  • WB の設定のほうが小さい — 逆に、写真は青寄りになります

電球の部屋で WB を太陽光(5500K)のまま撮るとオレンジに、晴れた屋外で WB を電球(3200K)にすると青く写るのは、このためです。

オートと、プリセットと、ケルビン指定#

ホワイトバランスの決め方は、大きく 3 つです。

  • オート(AWB) — カメラが画面の色から光の色を推定して補正します。ほとんどの場面で十分ですが、画面の大部分が同じ色のとき(夕焼けの空、芝生、赤い壁)は、それを光の色と取り違えて打ち消してしまうことがあります
  • プリセット — 「晴天」「日陰」「曇天」「電球」「蛍光灯」「フラッシュ」のように、光源の種類を選びます。光源がはっきりしているときに確実です
  • ケルビン指定 — 色温度の数値を直接入力します。光の色を自分で決めたいとき、何枚もの写真の色をそろえたいときに使います

グレーカードで合わせる#

もっとも確実なのは、その場の光の下で、白か灰色の板(グレーカード)を写し、それを基準にカメラに白を覚えさせる方法です(カスタムホワイトバランス、プリセットマニュアルなど、メーカーによって呼び名が違います)。商品撮影のように、色を正確に再現したい撮影の基本です。RAW で撮るなら、撮影の最初にグレーカードを 1 枚写しておけば、あとで現像ソフトのスポイトで同じ補正ができます(13 章)。

ティント:もう 1 本の軸#

色温度は、オレンジと青の間を動く 1 本の軸です。でも、光の色かぶりにはもう 1 つの向きがあります。緑とマゼンタ(赤紫)の軸で、これを補正するのが ティント です。

古い蛍光灯や、安価な LED 照明の光は、色温度では表しきれない緑の色みを含んでいます。シミュレーションで「蛍光灯(緑かぶり)」に切り替えると、色温度をどう合わせてもグレーカードに緑が残ります。ティントをマゼンタ側に動かすと、ようやく無彩色に戻ります。色温度だけでは直らない 色かぶり があったら、ティントを疑ってみてください。

ミックス光#

色温度の違う光が 1 枚の中に混ざっていることを、ミックス光と呼びます。窓からの昼光と、部屋の電球の光。夕暮れの空と、街灯の光。

ホワイトバランスは画面全体に同じ補正をかけるので、どちらか一方の光にしか合わせられません。シミュレーションで「ミックス光」に切り替えると、左右のグレーカードを両方とも無彩色にする設定がないことが分かります。

対処は 3 つです。

  1. 主役が照らされている光に合わせる — もう一方の光の色は、雰囲気として残す
  2. 光の色をそろえる — 照明を消す、カーテンで窓の光を遮る、ストロボにジェルを付けて部屋の照明の色に合わせる(11 章)
  3. 現像で部分的に直す — RAW 現像で、場所ごとに別の補正をかける(13 章)

夕暮れの室内で、窓の外の青と部屋の中のオレンジを両方残すのは、写真の定番の色の組み合わせでもあります。ミックス光は、常に直すべきものではありません。

色を演出として使う#

ホワイトバランスは「正しい色に直す」ための設定ですが、写真の雰囲気を決める演出の道具でもあります。

  • 夕景で WB を 6500K 前後にして、オレンジをさらに強調する
  • 雪景色や夜明けで WB を低めにして、青く冷たい空気感を出す
  • 人物の肌を少し暖かく転ばせて、健康的に見せる

10 章のシミュレーションで、夕方に WB を「オート」にすると、ゴールデンアワーの色が打ち消されて平凡になることを確かめてみてください。正確な色が、いつも求めている色とは限りません。

色空間と色域#

写真の色は、最終的に赤・緑・青の 3 つの数値で記録されます。ところが「赤を最大にした色」が実際にどんな赤なのかは、決めごとをしないと決まりません。その決めごとが 色空間 で、その色空間で表せる色の範囲を 色域 と呼びます。

読み込み中…

馬蹄形の外周が虹の 1 色ずつの位置(数字は光の波長 nm)で、人の目に見える色はすべてその内側にあります。三角形はそれぞれの色空間で表せる範囲です。黒い線は色温度ごとの光の色で、低い色温度ほど赤く、高いほど青い側にあります。この画面自体が sRGB 程度の色しか出せないので、三角形の外の塗りは本当の色ではありません。
色空間色域の広さ主な使われ方
sRGB標準Web、SNS、一般的なディスプレイ。迷ったらこれ
Display P3sRGB より 25% ほど広いスマートフォンや Mac などの最近の画面
Adobe RGBsRGB より広く、とくに緑〜青緑が広い印刷を前提にした撮影

色域の広い色空間で記録しても、それを表示する画面や印刷が対応していなければ、広い分の色は見えません。逆に、色空間の情報を正しく扱わないソフトで Adobe RGB の写真を開くと、色がくすんで見えます。

カメラの色空間の設定が効くのは JPEG だけです。RAW には色空間の区別がなく、センサーが受けたすべての色の情報が残っていて、現像するときに色空間を選びます(13 章)。Web や SNS に載せる写真は、最後は sRGB で書き出すのが確実です。

スマートフォンには、標準の設定のまま Display P3 で記録する機種もあります。色空間の情報を正しく扱わないソフトやサービスに渡すと色が変わって見えることがあるので、パソコンに移したり Web に載せたりして色が違うと感じたら、記録や書き出しの色空間を確かめてみてください。

画面の色が正しいとは限らない#

画面に表示される色は、画面ごとに少しずつ違います。明るさ、色温度、色域がそれぞれ違うからです。写真の色を細かく調整する前に、画面の色を測定器で測って補正しておくこと(キャリブレーション)を カラーマネジメント の第一歩と言います。そこまでしない場合でも、画面の明るさを最大にしすぎない、ナイトモード(色温度を下げる機能)を切っておく、といったことだけで、色の判断はずっと安定します。

彩度と自然な彩度(Google 画像検索)#

彩度 と 自然な彩度 は、どちらも色を鮮やかにする調整ですが、効き方が違います。

  • 彩度 — すべての色を一律に濃くします。もともと濃い色が先に限界に達して、階調のないベタ塗りになります
  • 自然な彩度 — 色の薄い部分を優先して持ち上げ、すでに濃い色と肌の色は控えめにします

人物の写った写真で彩度を上げると肌がオレンジに焼けたように見えるのは前者の性質で、それを避けたいときに後者を使います。現像ソフトに 2 つのスライダーが並んでいるのは、この違いのためです。

ピクチャーコントロール#

ピクチャーコントロール は、カメラが JPEG を作るときに使う、色・コントラスト・シャープネスの既定の組み合わせです。メーカーによってピクチャースタイル、クリエイティブスタイル、フィルムシミュレーションなどと呼ばれます。

名前の例写り方
スタンダード見栄えのよい、やや鮮やかでくっきりした標準
ニュートラル / フラット彩度もコントラストも控えめ。あとで調整する素材向き
ビビッド / 風景彩度とコントラストが高い。空や緑が濃くなる
ポートレート肌の色を柔らかく、なめらかに
モノクロ白黒。色ごとに明るさの割り当てを変えるフィルター効果を選べる機種も

これらは要するに撮影時に焼き込まれる現像のプリセットです。JPEG で撮るなら、撮る前に選んだものがそのまま写真の色になります。RAW で撮るなら、あとで現像ソフトで選び直せます。

ミラーレスでは、選んだピクチャーコントロールの結果がファインダーにそのまま表示されます(1 章の露出シミュレーション)。モノクロに設定すれば、撮る前からモノクロで構図を考えられます。

スマートフォンでは、撮影の瞬間に焼き込まれるものがさらに多くなります。複数枚の合成(1 章)に加えて、空・肌・植物といった被写体を見分け、場所ごとに色や明るさを変える処理まで済ませている機種が多くあります。スマートフォンの写真が見た目より鮮やかで明るく感じられることがあるのは、こうした処理によるものです。標準の撮影モードにはホワイトバランスを数値で決める設定がないことも多いので、色を自分で決めたいときは、手動で設定できる撮影モードや RAW(13 章)を使います。