人物写真は、ここまでの章のほぼすべてが関わるジャンルです。とはいえ、決めることの順番は決まっています。まず「どの距離から、どれだけの範囲を、どんな背景で」撮るかを決め、それに合わせて露出の 3 つのつまみと光を整える、という順番です。
設定を決める順番#
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ショットサイズと焦点距離を決める 09 焦点距離と遠近感
顔だけか、上半身か、全身か。顔を自然に見せたいなら、顔を大きく写すほど離れて望遠で撮る(バストアップなら
85mm前後で2mあまり)。 -
背景と、人物と背景の距離を決める 06 絞りと被写界深度
背景に入るものを選び、人物を背景から離して立たせる。背景が遠いほどぼけやすい。
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光の向きを決める 10 自然光
人物の向きを変えるか、自分が回り込んで、顔に斜めから柔らかい光が当たる位置を探す。直射日光なら日陰か逆光へ。
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絞りを決める 06 絞りと被写界深度
1 人なら
f/1.8〜f/2.8で背景をぼかす。顔全体に深度が欲しければf/2.8〜f/4。複数人ならf/5.6〜f/8。 -
ピントの合わせ方を決める 04 ピントとオートフォーカス
瞳 AF(なければ目の位置のシングルポイント)と AF-C。手前の目に合わせる。
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シャッター速度の下限を決める 07 シャッターと時間
止まっている人物でも 1/(焦点距離 × 2) 秒より速く。歩いたり笑ったり動くなら
1/250sより速く。オート ISO の低速限界に設定する。 -
明るさと色を確かめる 08 測光とヒストグラム
肌が明るく見えるよう、露出補正は
±0〜+0.7から。WB は光に合わせ、肌が少し暖かく見えるくらいに。
場面ごとの出発点#
| 場面 | 焦点距離 | 絞り | シャッター速度 | ISO |
|---|---|---|---|---|
| 屋外・日陰や曇り | 50〜85mm | f/1.8〜f/2.8 | 1/250s〜 | 100〜400 |
| 屋外・逆光(夕方) | 85mm | f/2〜f/2.8 | 1/250s〜 | 100〜400、露出補正 +0.7〜+1.3 |
| 窓辺の室内 | 35〜85mm | f/1.8〜f/2.8 | 1/125s〜 | 400〜1600 |
| 室内のイベント(ストロボなし) | 24〜70mm | f/2.8 | 1/125s〜 | 1600〜6400 |
| 夜の街 | 35〜50mm | f/1.4〜f/2 | 1/60s〜 | 1600〜6400 |
数字はあくまで出発点です。撮ってヒストグラムを確かめ、明るさと深度を調整していきます。
焦点距離と距離#
9 章で見たとおり、顔つきを決めているのは焦点距離ではなく、撮影距離です。顔を同じ大きさで写すなら、遠くから望遠で撮るほど顔は平らで穏やかに、近くから広角で撮るほど鼻が大きく、顔の奥行きが強調されます。
35mm— 周りの環境ごと写す。近づくと顔の誇張が出るので、全身や上半身向き50mm— 全身から上半身まで。自然な距離感で、会話しながら撮れる85mm— 上半身から顔。顔がもっとも自然に見え、背景もほどよく整理される135mm— 顔のアップ。背景は大きくぼけ、狭く整理される。被写体との距離が遠く、声が届きにくい
背景の整理には、ボケ(6 章)と圧縮(9 章)の両方が効きます。背景を人物から遠ざけ、望遠で狭く切り取り、絞りを開ければ、ほとんどの場所で背景をすっきりさせられます。被写界深度のシミュレーションを 85mm f/2 3m で開くと、背景がどれだけぼけるかを確かめられます。
顔に当たる光#
人物写真の光は、柔らかく、斜めから当たるのが基本です(10 章)。
- 日陰 — 晴れた日の建物の陰や木陰は、空全体からの柔らかい光になります。日なたとの境目のすぐ内側に立ってもらうと、日なたの地面からの照り返しが顔を下から起こしてくれます
- 逆光 — 太陽を人物の背後に置くと、髪の輪郭が光り(リムライト)、顔は柔らかい影の中に入ります。顔が暗くなるので、露出補正をプラスにするか、レフ板で顔に光を返します
- 窓辺 — 窓を顔の斜め前に置くと、柔らかいサイド光になります。窓に近いほど背景は暗く落ちます(逆二乗則)
- ゴールデンアワー — 低く暖かい光が、肌をきれいに見せます
正午の直射日光の下で、人物にカメラのほうを向いてもらうと、目元に濃い影が落ち、まぶしさで目を細めてしまいます。場所を変えるか、太陽に背を向けてもらいましょう。
ストロボで光を足す#
晴れた屋外の逆光で、顔をストロボで少しだけ明るくすると、背景の空を飛ばさずに顔を写せます(日中シンクロ)。ストロボの光は弱めにして、自然光に少し足すくらいにとどめると自然です。絞りを開けてシャッター速度がシンクロ速度を超えるなら、ハイスピードシンクロを使います(11 章)。
スタジオでの照明の組み立ては、11 章のライティングのシミュレーションで、パターンとライティング比を確かめられます。
ピントは目に#
人物写真では、目にピントが合っていることがほぼ必須の条件です。4 章で見た瞳 AF があれば、まずそれを使います。
- 顔が斜めを向いているときは、カメラに近いほうの目に合わせます
f/1.4のような開放付近では、被写界深度が数センチしかありません。まつげに合うか耳に合うかで写真の印象が変わります- 半押しで合わせてから構図を変える方法は、開放付近ではピントが外れる原因になります(4 章)。目の位置の測距点か、瞳 AF を使います
構図#
- 目の高さ — 目が画面の上から 3 分の 1 あたりに来ると収まりがよくなります(14 章)
- 向いている方向に余白 — 顔や体の向きの先に空間を残します
- 関節で切らない — 手首・ひじ・ひざ・足首のちょうど上で切らないようにします
- カメラの高さ — 目の高さか、少し上からが基本。見上げると力強く、見下ろすと柔らかい印象になります(15 章)
- 背景の線 — 水平線や電柱が頭や首を横切らない位置に動きます
複数人を撮る#
集合写真では、全員の顔が被写界深度に入る必要があります。
- 前後に並ぶなら
f/5.6〜f/8 - 横一列なら、カメラと平行にまっすぐ並んでもらう。ピント面はカメラと平行な平らな面なので(4 章)、まっすぐ並べば全員が同じピント面に入ります
- ピントは前から 3 分の 1 くらいの列の人の目に合わせる(深度は奥に広い。6 章)
- 誰かが目を閉じていることが多いので、連写で何枚も撮る
撮る前に確かめること
よくある失敗と原因#
| 失敗 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 目ではなく鼻先や耳にピント | 浅い被写界深度でのフォーカスロック、AF エリアの選び違い | 瞳 AF、目の位置の測距点(4 章) |
| 顔が暗い | 逆光、背景の明るさに引きずられた測光 | 露出補正をプラス、レフ板、ストロボ(8 章・10 章) |
| 顔が大きく、鼻が目立つ | 近づきすぎ(広角で寄った) | 離れて焦点距離を伸ばす(9 章) |
| 背景がうるさい | 背景が近い、絞りすぎ、広角で背景が広い | 背景から離す、開ける、望遠で絞る(6 章・9 章) |
| 肌がオレンジや緑っぽい | ホワイトバランス、照明の色、彩度の上げすぎ | WB を合わせる、自然な彩度を使う(12 章・13 章) |
| 少しぶれている | シャッター速度が遅い | 1/(焦点距離 × 2) 秒より速くする、オート ISO の低速限界(7 章) |