レンズが結んだ像は、そのままでは光の模様にすぎません。イメージセンサー は、その模様を細かい升目に区切り、升目ごとに届いた光の量を数えて数値にする部品です。フィルムカメラでフィルムが担っていた役目を、電子的に行っています。
写真の「画質」と呼ばれるもの、つまりノイズの少なさ、明暗の豊かさ、色の正しさ、細かさの多くは、この数える仕事の精度で決まります。
光の粒を数える#
光は、とても小さなエネルギーの粒(光子)の集まりとして振る舞います。センサーの 1 つ 1 つの升目には フォトダイオード があり、光子が当たると、その数に比例して電子が生まれて貯まります。シャッターが開いている間だけ貯め、閉じたらその量を読み出す。センサーがしていることは、突き詰めるとこれだけです。
この升目の 1 つが 画素 です。いまのカメラのセンサーには、これが 2000 万〜6000 万個ほど並んでいます。
1 つの画素が貯められる電子の数には上限があります。上限に達した画素は、それ以上光が来ても同じ値のままです。これが白飛びの物理的な正体で、8 章でくわしく扱います。
フォトダイオードの上には、光を画素の中心に集める小さなマイクロレンズが載っています。画素と画素の隙間に落ちる光を無駄にしないためです。また、読み出しの配線を光の通り道の下側に回して、より多くの光をフォトダイオードに届けるようにしたものを 裏面照射型センサー と呼びます。
色を分ける#
フォトダイオードは、届いた光の量しか測れません。光が赤いのか青いのかは区別できないのです。そこで、各画素の上に赤・緑・青のどれか 1 色だけを通すフィルターを載せます。
並べ方は、2×2 の升目に赤 1・緑 2・青 1 を置いたくり返しです。これが ベイヤー配列 です。
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こうして記録された値は、1 画素につき 1 色ぶんしかありません。赤のフィルターの画素には、緑と青の値がないのです。足りない 2 色は、周りにある同じ色のフィルターの画素から推定して埋めます。この処理が デモザイク で、カメラの中や現像ソフトが行っています。
緑が 2 倍あるのは、人の目が明るさの違いを主に緑の光で感じているからです。明るさの細かさを優先し、色は少し粗くてもよい、という割り切りで、人の目にはこれでほとんど違いが分かりません。
偽色とモアレ#
推定で埋めている以上、画素の間隔と同じくらい細かい模様は正しく再現できません。シミュレーションで「細かい縞」に切り替えると、白と黒しかない縞に、本来ない色が付いたり、うねった模様が出たりします。前者が 偽色、後者が モアレ です。布の織り目、建物の細かい格子、遠くの瓦屋根などで現れます。
これを防ぐため、センサーの前に像をわずかにぼかすフィルター(ローパスフィルター)を置くカメラがあります。ぼかしてから記録するので偽色は出にくくなりますが、そのぶん解像は少し落ちます。画素数の多い最近のカメラでは、画素が細かくなって模様が画素間隔より粗くなりやすいので、ローパスフィルターを省いて解像を優先するものが増えています。
数値にする#
貯まった電子の量は電圧として読み出され、AD 変換 で整数の数値になります。何段階の整数に丸めるかが ビット深度 です。
| ビット深度 | 段階の数 | 使われる場所 |
|---|---|---|
| 8 bit | 256 | JPEG、一般的なディスプレイ |
| 12 bit | 4,096 | RAW(多くのカメラ) |
| 14 bit | 16,384 | RAW(多くのカメラの高画質設定) |
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センサーの値は届いた光の量に比例しています。光の量が 2 倍になると値も 2 倍です。ところが人の目は、光の量が 2 倍になることを「一定の幅だけ明るくなった」と感じます。暗いところでの 2 倍も、明るいところでの 2 倍も、同じ 1 段の違いに見えるのです(5 章の「段」)。
その結果、比例で記録された段階は明るいほうに偏って使われます。最も明るい 1 段に全体の半分の段階が割り当てられ、その下の 1 段にはさらに半分、と減っていきます。14 bit なら最も明るい 1 段に 8192 段階ありますが、5 段暗い部分には 256 段階しか残りません。
適正に撮った写真なら、これで困ることはありません。問題になるのは、暗く撮ってしまった写真をあとから明るく持ち上げるときです。シミュレーションで「3 段暗く撮って、あとで持ち上げる」に切り替え、ビット深度を下げてみてください。暗部の少ない段階が 8 倍に引き伸ばされて、空や影に縞(トーンジャンプ)が出ます。RAW が 12〜14 bit で記録しているのは、撮ったあとで明るさや色を大きく動かしても、こうした縞を出さないための余裕です(13 章)。
ノイズの正体#
写真のざらつき、つまり ノイズ は、暗い場所で撮ったときや ISO 感度を上げたときに出る、という順番で覚えられがちです。けれども本当の原因は 1 つで、センサーに届いた光が少ないことです。
光の粒はばらつく#
光の粒がセンサーに届く数は、平均が同じでも毎回ばらつきます。雨粒がバケツに入る数が、同じ雨の中でも毎秒少しずつ違うのと同じです。平均 100 個届くはずの画素には、実際には 90 個だったり 110 個だったりが届きます。
このばらつきの大きさは、平均の数の平方根になることが分かっています。平均 100 個なら ±10 個、平均 10000 個なら ±100 個です。ばらつきの割合で見ると、100 個のときは 10%、10000 個のときは 1% になります。光の粒が多いほど、ばらつきは目立たなくなるのです。これが ショットノイズ で、光そのものが持っている性質なので、どんなに優れたセンサーでも避けられません。
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光の粒を減らしていくと、画像は急速に荒れていきます。暗い部分ほど届く粒が少ないので、先に荒れることにも注目してみてください。夜景の写真で、空や影の部分ばかりがざらつくのはこのためです。
センサーの回路も、読み出しのときにわずかなノイズを足します。これが 読み出しノイズ で、届いた光の量によらずほぼ一定です。光がたくさん届いていれば埋もれて見えませんが、光がとても少ないときに効いてきます。シミュレーションで「あり」に切り替えると、光の粒が少ない段階でだけ違いが出ることが分かります。
ほかにも、長い時間露光するとセンサーの熱で電子が生まれる熱ノイズ(7 章の長秒露光で扱います)や、画素ごとの感度のわずかな違いによる固定パターンのノイズがあります。
ノイズは見え方で 2 種類に分けて呼ばれます。明るさのざらつきが輝度ノイズ、色の付いた斑点が カラーノイズ です。現像のノイズ除去では、この 2 つを別々に抑えます(13 章)。
ISO 感度は何をしているか#
ISO 感度 を上げても、センサーに届く光は 1 粒も増えません。ISO 感度がしているのは、貯まった電子の信号を何倍に増幅してから数値にするか、の指定です。ISO 400 は ISO 100 の 4 倍に増幅しています。
ISO を上げると明るく写るのは、少ない光を増幅しているからです。増幅すれば、光の粒のばらつきも同じだけ増幅されます。ISO を上げたときにノイズが目立つのは、増幅でノイズが生まれたからではなく、少ない光で写していることが、増幅によって見えるようになったからです。
ダイナミックレンジ#
センサーが一度に記録できる明暗の幅を ダイナミックレンジ と呼び、段数で数えます。上限は画素が貯められる電子の数(それ以上は白飛び)、下限は読み出しノイズに埋もれて区別できなくなる暗さ(黒つぶれ)です。
| 明暗の幅(目安) | |
|---|---|
| 晴れた日の、日なたと深い影を含む景色 | 15〜20 段 |
| いまのデジタル一眼の RAW | 12〜15 段 |
| JPEG としての仕上がり | 9〜11 段 |
| 一般的なディスプレイ・印刷 | 6〜10 段 |
景色の明暗の幅が、センサーの幅に収まらないことはよくあります。そのとき、明るいほうを守るか暗いほうを守るかを決めるのが露出の判断で、8 章で扱います。ここで覚えておきたいのは、ダイナミックレンジは ISO を上げるほど狭くなることです。増幅すると、上限(白飛び)に早く達してしまうからです。明暗差の大きい場面では、なるべく低い ISO で撮るほうが余裕を残せます。
センサーの大きさ#
センサーの大きさは、写真のいくつもの性質を同時に変えます。
画角#
同じ焦点距離のレンズなら、センサーが小さいほど写る範囲は狭くなります。センサーが像の中央部分だけを切り取るからです。この比が クロップファクター で、APS-C に 35mm のレンズを付けると、フルサイズ の 52mm とほぼ同じ範囲が写ります。9 章でくわしく扱います。
ボケ#
同じ画角・同じ F 値で撮ると、センサーが大きいほどボケは大きくなります。同じ画角を得るのに、大きなセンサーではより長い焦点距離のレンズを使うからです。6 章のシミュレーションで、センサーを切り替えて確かめられます。
ノイズ#
同じ F 値・同じシャッター速度なら、センサーの単位面積あたりに届く光の量は、センサーの大きさによらず同じです。ところがセンサー全体で見ると、大きいセンサーは面積が広いぶん、たくさんの光を集めています。フルサイズは APS-C の約 2.3 倍の光を受けています。
写真を同じ大きさで見比べると、集めた光の総量が多いほうがノイズは目立ちません。フルサイズが暗い場所に強いと言われるのはこのためで、ノイズの差はおおよそ 1 段強です。スマートフォンが何枚も重ね撮りしてノイズを減らすのは、1 枚では集められない光の量を、時間をかけて集めているのだと考えることもできます。
大きさの代償#
センサーが大きいと、同じ画角を得るためのレンズも大きく重くなり、ボディも大きくなります。被写界深度が浅くなりやすいことも、風景や物撮りでは短所になります。何を優先するかで選ぶものです。
画素数と画素ピッチ#
画素数 は、センサーに並んでいる画素の数です。2400 万画素なら、横 6000 × 縦 4000 画素ほどになります。
| 画素数 | 横 × 縦 | 300dpi で印刷できる大きさ |
|---|---|---|
| 1200 万 | 4000 × 3000 | 34 × 25cm |
| 2400 万 | 6000 × 4000 | 51 × 34cm |
| 4500 万 | 8256 × 5504 | 70 × 47cm |
| 6100 万 | 9504 × 6336 | 80 × 54cm |
4K のディスプレイの画素数は約 830 万です。画面で見るだけなら 2000 万画素でも十分な余裕があり、画素数が効いてくるのは、大きく印刷するときと、あとから大きくトリミングしたいときです。
同じ大きさのセンサーに画素を多く並べると、1 画素あたりの大きさ(画素ピッチ)は小さくなり、1 画素が受ける光は減ります。画素単位で拡大して見ればノイズは増えますが、写真全体を同じ大きさで見比べると、画素数による差はわずかです。ノイズを決めているのは、画素の大きさよりも、センサー全体で集めた光の量だからです。