2 章で見たとおり、レンズが光を 1 点に集められるのは、決まった距離から来た光だけです。その距離にある面を ピント面 と呼びます。ピント面は、センサーと平行な 1 枚の平らな面です。
ピントを合わせるとは、レンズを前後に動かして、撮りたいものがちょうどピント面に乗るようにすることです。ピント面から外れたものは、光が 1 点に集まりきらずにぼけます。どこまでの外れなら「合っている」ように見えるか、その範囲が被写界深度で、6 章で扱います。
この章では、カメラがどうやってピントの外れを測っているのか、そして撮影者が何を決めればよいのかを見ていきます。
オートフォーカスの仕組み#
オートフォーカス には、大きく分けて 2 つの測り方があります。下のシミュレーションで、ピントを外してから、それぞれの方法で合わせてみてください。
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コントラスト AF#
ピントが合っているとき、像はいちばんくっきりして、明暗の差(コントラスト)が最大になります。コントラスト AF は、この性質だけを頼りにします。レンズを少し動かしてはコントラストを測り、上がればその向きに進み、下がれば引き返す。山の頂上を手探りで探すようなものです。
センサーの像そのもので測るので、合ったときの精度はとても高くなります。そのかわり、今どちらにずれているのかが 1 回の測定では分からないので、頂上を一度越えてから戻るまで、何度もレンズを動かします。暗い場所や模様の少ない被写体では、山がなだらかになって頂上が見つけにくく、レンズが行ったり来たりを繰り返すことがあります。これが ピントの迷い です。
位相差 AF#
位相差 AF は、レンズの右端と左端(シミュレーションでは上半分と下半分)を通った光を、別々に見比べます。
ピントが合っていれば、どちらを通った光も同じ 1 点に集まるので、2 つの像はぴったり重なります。ピントが外れると、2 つの像は逆向きにずれます。前ピン(像がセンサーの手前)なら内向き、後ピン(奥)なら外向きです。ずれの向きでレンズをどちらへ動かせばよいかが、ずれの量でどれだけ動かせばよいかが分かるので、1 回の測定で合焦位置へまっすぐ動かせます。動く被写体を追いかけられるのは、この速さのおかげです。
一眼レフでは、ミラーの一部を半透明にして光を下へ逃がし、ボディの底にある専用の AF センサーで位相差を測っています。測れる場所は AF センサーの 測距点 の位置だけで、撮像センサーとは別の場所で測っているぶん、わずかな取り付けのずれがピントのずれになることがあります。カメラにある「AF 微調整」は、このずれをレンズごとに直す機能です。
像面位相差 AF#
ミラーレスでは、撮像センサーの画素の一部を、位相差を測るための画素にしています。これが 像面位相差 AF です。センサーそのもので測るので、画面のほぼ全域で測れ、一眼レフのような取り付けのずれも起きません。機種によっては、位相差で素早く合焦位置の近くまで動かし、最後をコントラストで詰める、という組み合わせで動くものもあります。
スマートフォンの多くも、同じ像面位相差 AF を使っています。ただし、スマートフォンはセンサーが小さく焦点距離もとても短いので、同じ画角・同じ距離で撮っても被写界深度がずっと深くなります(6 章)。ピントが多少外れても写真に出にくいのはこのためで、一眼に持ち替えたとたんにピンボケが増えたように感じるのは、AF の性能より被写界深度の違いによることが多いのです。
AF が苦手なもの#
どちらの方式も、像の明暗の差を手がかりにしています。手がかりのないものは苦手です。
- 真っ白な壁や青空のような、模様のない面
- 暗い場所(光が少ないとノイズに埋もれる。3 章)
- ガラス越しの被写体、網やフェンスの奥の被写体(手前に合いやすい)
- 同じ模様の繰り返し(ずれを読み違える)
- 強い逆光(コントラストが落ちる)
こうした場面では、被写体の輪郭や、同じ距離にある別の模様のあるものに合わせてからピントを固定するか、次の節のマニュアルフォーカスに切り替えます。暗い場所では、カメラが被写体に光を当てて手がかりを作る AF 補助光 が働くこともあります。
いつ合わせ続けるか:AF モード#
AF-S / AF-C は、一度合わせたピントを固定するか、追い続けるかの選択です。
- AF-S(シングル) — 半押しで一度合ったら、そこで固定します。止まっている被写体向け
- AF-C(コンティニュアス) — 半押ししている間、ずっと合わせ続けます。動く被写体向け
- AF-A(自動) — 被写体が動き出したら AF-C に切り替わります
判断の基準は「被写体が動くかどうか」と言われますが、正確にはカメラと被写体の距離が変わるかどうかです。被写体が左右に動くだけなら距離は変わらないので AF-S でも撮れます。近づいてくる、遠ざかるなら AF-C が要ります。
AF-C では、カメラは被写体の動きを予測しながら合わせ続けます。シャッターボタンを押してから実際に露光されるまでのわずかな時間に、被写体はさらに近づいているからです。
ピントが合わなくても撮るか#
AF-S と AF-C には、ピントが合っていないときにシャッターを切らせるかどうかの設定もあります。合うまで切れないのが フォーカス優先、合っていなくても切れるのがレリーズ優先です。止まっているものを確実に撮るならフォーカス優先、決定的な瞬間を逃したくないならレリーズ優先です。多くのカメラは、AF-S をフォーカス優先、AF-C をレリーズ優先にしています。
どこに合わせるか:エリアモード#
画面のどこでピントを測るかを決めるのが AF エリアモード です。
- シングルポイント — 測る場所を 1 点だけ、自分で選びます。どこに合わせるかを完全に決められるので、止まっている被写体ではいちばん確実です
- ゾーン — 範囲を自分で選び、その中のどこに合わせるかはカメラにまかせます。動きが予測しにくい被写体に
- ワイド(自動) — 画面全体からカメラが選びます。カメラは「いちばん手前にある、コントラストの高いもの」を選びがちです。人物を撮ったのに手前の手や胸元にピントが来ていた、というのはたいていこれです
- トラッキング — 最初に合わせた被写体を、画面の中で動いても追いかけ続けます
被写体検出と瞳 AF#
ミラーレスの多くは、画面の中から人の顔や瞳、動物、乗り物などを見つけて、そこに合わせ続ける 被写体検出 を持っています。人の瞳に合わせるものが 瞳 AF です。
人物写真では、目にピントが来ていることがほぼ必須の条件です。目以外がくっきりしていても、目がぼけていると「ピンボケの写真」に見えます。被写界深度が数センチしかない開放付近のポートレートでは、まつげに合うか耳に合うかで写真の成否が分かれるので、瞳 AF があるかどうかで使えるカットの数が大きく変わります。
スマートフォンのカメラも、顔や瞳を自動で見つけて合わせ続けます。AF モードやエリアモードを選ぶ設定はたいていなく、カメラが合わせ続けている中で、画面をタップした場所を優先させる、という操作になります。機種によっては、画面を長押しするとピントと明るさがその位置で固定されるので、次の節のフォーカスロックと同じ使い方ができます。
ピントを合わせる操作#
半押しで合わせて、構図を変える#
1 章で、シャッターボタンの半押しでピントを合わせ、そのまま構図を整えてから撮る、という順番を紹介しました。これが フォーカスロック です。画面の中央でしか正確に測れなかった時代から使われてきた、基本の動作です。
親指でピントを合わせる#
ピント合わせをシャッターボタンから外し、背面の AF-ON ボタンに分ける設定があります。これが 親指 AF です。
- 親指で AF-ON を押している間だけピントを合わせ、離せば固定されます。シャッターボタンを押してもピントは動きません
- AF-C のままでも、親指を離せば AF-S のように固定できるので、モードを切り替えずに止まったものと動くものの両方に対応できます
慣れるまで少し時間がかかりますが、動くものを撮る人の多くがこの方法を使っています。
マニュアルフォーカス#
マニュアルフォーカス が要るのは、AF が苦手なもの(前の節)を撮るときと、ピントの位置そのものを表現として決めたいときです。
ミラーレスでは、MF を助ける道具がそろっています。
- 拡大表示 — 合わせたい場所を 5〜10 倍に拡大して、くっきりした位置を探します。いちばん確実です
- フォーカスピーキング — 合っている輪郭に色を重ねて表示します。拡大しなくても、どこに合っているかが分かります
- 距離目盛 — レンズやファインダーに、今ピントが合っている距離が表示されます
置きピン#
被写体が来る場所が分かっているなら、先にその場所にピントを合わせて固定し、被写体が来た瞬間に撮る方法があります。これが 置きピン です。ゴールラインを横切る走者、決まった場所を通る電車、水面に飛び込む鳥のように、AF の追いかけが間に合わない速い被写体で使います。
もう 1 つ、6 章で扱う過焦点距離を使って、手前から無限遠まで全部を被写界深度に入れてしまい、ピント合わせ自体をしない方法もあります。スナップ撮影でよく使われます(20 章)。
ピンボケの原因を見分ける#
撮った写真がぼけていたら、原因は主に 4 つです。写真のどこがくっきりしているかで見分けられます。
| どう見えるか | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 被写体はぼけているが、手前か奥のどこかはくっきりしている | ピント位置が違う(前ピン・後ピン) | 測距点・エリアモードを見直す |
| 画面のどこもくっきりしていない。輪郭が一方向に流れている | 手ブレ(7 章) | シャッター速度を上げる・手ブレ補正 |
| 被写体の動いた部分だけが流れている | 被写体ブレ(7 章) | シャッター速度を上げる |
| 目には合っているが、鼻先や耳がぼけている | 被写界深度が浅い(6 章) | 絞る・離れる |
拡大して確かめるときは、写真の中で「いちばんくっきりしている場所」を探してみてください。それがピントの合った場所です。そこが撮りたいものの手前なら前ピン、奥なら後ピンです。
ピントを重ねる:深度合成#
マクロ撮影や物撮りでは、絞っても被写界深度が足りないことがよくあります。等倍のマクロでは、f/8 まで絞っても深度は 1mm ほどしかありません。
そこで、ピント位置を少しずつずらしながら何枚も撮り(フォーカスブラケット)、それぞれのくっきりした部分だけを合成して、手前から奥まで全部にピントの合った 1 枚を作ります。これが 深度合成 です。多くのカメラにピント位置を自動でずらしながら撮る機能があり、合成は現像ソフトで行います。